人の忌引に気を使わないものだろうか。
異性に好意を持たれるのが苦手だ。
たとえ、自分からアプローチした人であっても。
そのため、生まれてこの方付き合ったことがない。
そして、今、休日によく誘ってくれる人がいるのだが、
私はその人が苦手。
5月のある日、祖母が亡くなった。
その日は予定されていたテストを受け、半日で帰り、
翌日会社を休んだ。
次の日、腫れた目を化粧で隠し、
たくさんの花や、霊柩車や、白い骨なんかで一杯の頭で、会社へ行った。
一日半休んだことで、研修内容はさっぱりわからず、
大混乱時代だった。
そして午後、例の人は突然私の前へやってきて言った。
「おめでとう」
その言葉に耳を疑ってしまった。何がおめでとうなんだ。
祖母が亡くなって、こんなに悲しいのに、何がめでたいんだ。
私の混乱に気づいたのか、私がよほど彼を睨みつけていたのか、
「テストのこと」と、彼はつけたした。
私は前々日に受けたテストの高得点者として名前が掲示されていたのだった。
その日、
私はいつもと同じくたくさん冗談を言って笑っていたけれど、
一人になるとやはり悲しかった。
その精神状態のなかで彼の「おめでとう」という言葉は本当に信じられなかった。
その無神経さに愕然とした。
彼が私が「忌引き」したことは知っているはずである。
(もしかしたら「忌引き」という言葉を知らなかったのかもしれないが。)
人の忌引きって、気を使わないものだろうか。
所詮他人事、気づかないものか。
彼の発言が非常識なのか、
私がナーバスになりすぎていたのかわからないけれど、
自分の中で何度その問いを回しても、一向に答えにならない。